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日本株の銘柄図鑑

INPEX(1605)【株の銘柄図鑑】原油・ガス開発の最大手は何で稼いでいる会社?

「ホルムズ海峡」という単語をニュースで見るたびに、少しだけ身構える銘柄があります。

INPEX(1605)。2020年頃から段階的に買い増して、現在は特定口座で200株(取得単価@¥1,853)、NISA成長枠で100株(同@¥1,924)の合わせて300株を保有しています。中東情勢が荒れるたびに株価が動く会社を、なぜ持ち続けているのか。今日はそこを正直に書きます。

この記事でわかること

  • INPEX(1605)が何を売って、誰から稼いでいるのか
  • 企業スコア総合7.0の中身——株価モメンタムは高いが、財務健全性は業界平均以下という意外な弱点
  • 資源株特有の「稼ぎの乱高下」と、配当・キャッシュフローの実態
  • ホルムズ海峡リスクを抱えたまま、なぜ保有を続けているのか
  • 2026年8月の通期上方修正・増配・自社株買いをどう受け止めたか

① 一言でいうと

日本最大の石油・天然ガス開発会社です。豪州のイクシスLNGプロジェクトが収益の柱で、政府(経済産業大臣)が黄金株を保有する、エネルギー安全保障そのものを担う会社でもあります。

② 何を売っていて誰が買っているのか

スーパーの電気代・ガス代の請求書、ガソリンスタンドの給油——その大元をたどると、こういう会社が海外の海底や地下から掘り出した原油・天然ガスに行き着きます。連結事業の内訳は原油76%・天然ガス22%。海外比率は69%で、豪州・インドネシア・アブダビ・カスピ海など世界中に権益を持っています。

買っているのは個人ではなく、電力会社・ガス会社・商社といった企業です。INPEXは資源そのものを掘って売る、上流(アップストリーム)に特化したビジネスです。

③ どうやって儲けているのか

海外の油田・ガス田豪州・中東・カスピ海等権益INPEX探査・開発生産・出荷原油・LNG電力・ガス会社商社・エネルギー企業資源そのものを掘って売る「上流」ビジネス

荷物や製品を仕入れて加工するのではなく、権益を持つ油田・ガス田から直接資源を掘り出し、原油・LNGとして販売します。だから儲けの中身は「原油・LNG価格 × 生産量」でほぼ決まります。価格は自分たちでコントロールできない変数です。

④ 強みは何か

時価総額は約4兆6,449億円、燃料・資源業種の中で時価総額1位(39社中)。イクシスLNGという安定した収益基盤に加え、西豪州沖合のガス鉱区買収やカスピ海開発の政府持分取得など、権益の拡大も継続しています。自己資本比率61.0%と財務の土台自体は悪くありません。

SBI証券の企業スコアでは総合7.0(業界平均6.5)。特に株価モメンタム9.0(平均8.5)が強く、直近の資源高・円安局面での株価の勢いがそのまま表れています。

INPEX(1605) 指標サマリー(SBI企業スコア)

⑤ 弱点・リスクは何か

企業スコアで唯一目立って低いのが財務健全性2.0(平均3.5)です。自己資本比率61.0%自体は悪くないのですが、有利子負債は1兆3,382億円と絶対額が大きく、資源開発という設備投資の重い事業構造が反映されていると見られます。

もう一つ、配当とキャッシュフローの関係にも触れておきます。直近期は豪州・中東での大型開発案件が重なり投資キャッシュフローが-6,687億円まで拡大、営業CF6,938億円を上回りました。フリーキャッシュフロー(営業CF+投資CF)はプラス251億円とかろうじて黒字ですが、配当総額(112円ベースで概算約1,300億円)はこのFCFを大きく上回ります。つまりこの期の配当は、稼いだキャッシュだけでなく手元資金や調達も使って支払われている計算です。

そしてEPS推移のグラフを見れば一目瞭然ですが、稼ぎの振れ幅がとにかく大きい。2022年12月期は資源高で364.7円まで跳ねた翌年、248.6円まで落ちています。原油・ガス価格という自分では動かせない変数に、業績が直結する構造です。

INPEX(1605) EPS推移

⑥ 景気耐性

ここは正直に、他の高配当株とは違う性質だと認識しています。エネルギーは生活に不可欠なので需要そのものは景気に左右されにくい一方、価格変動リスクは他業種より大きい。加えて中東・ロシア情勢という地政学リスクに常時さらされています。実際、2026年8月7日の会社開示でも、上期は「中東情勢の影響による販売量の減少」で売上収益が計画を下回ったと説明されています(利益は原油価格上昇とイクシスの好調で計画超過)。地政学リスクがそのまま数字に出る構造だということです。景気耐性というより「エネルギー価格・地政学耐性」というべき銘柄です。

⑦ 配当は安心して持てそうか

項目 数値 コメント
①配当利回り(予想) 約3.1% 現在値¥3,612・配当112円で試算。高配当株としては控えめな水準
②連続増配年数 5期連続(予定含む) 21/12期48円→25/12期100円、26/12期は当初108円予想→8/7に112円へ増額修正
③累進配当方針の有無 未確認 会社側の明言は現時点で確認できていません(要IR資料確認)
④DOE(株主資本配当率) 2.5% 25/12期実績。累進配当を掲げる高ROE銘柄と比べても物足りない水準
⑤配当性向 約26%(26/12予) 25/12期実績は30.2%。112円÷通期EPS予想438.8円で約26%。資源株としては保守的な還元姿勢
⑥配当÷営業キャッシュフロー 約19% 配当総額概算約1,300億円/営業CF6,938億円
⑦配当÷フリーキャッシュフロー 約518% 配当総額概算約1,300億円/FCF251億円。大型投資でFCFが縮小した期のため配当がFCFを大幅に超過。単年の数字であり、複数年での推移監視が必要

INPEX(1605) 配当推移(26/12期配当は8/7に112円へ増額)

配当性向・DOEだけを見ると保守的で余裕がありそうに見えますが、配当÷FCFは大型投資年度の実態を映しています。稼いだ利益に対しては控えめな還元でも、キャッシュの出入りで見ると投資と配当を両方まかなうのは楽ではない年もある、というのが実態に近い評価です。

⑧ 今、なくなったら誰が困るか

日本のエネルギー自給率はきわめて低く、原油・LNGの多くを輸入に頼っています。政府が黄金株を保有しているのはまさにこの重要性の裏返しで、INPEXが供給する資源が急に止まれば、電力・ガス会社を通じて生活者にも直接影響が及びます。ただし資源そのものは石油資源開発(1662)やENEOSなど他社からの調達・輸入も可能で、INPEXでなければ日本のエネルギーが完全に止まる、という話ではありません。

⑨ 結び:自分なら持ち続けられるか

特定口座200株(取得単価¥1,853)・NISA成長枠100株(同¥1,924)の合計300株で、直近の含み益は+52万円超とプラスです。ただしこの評価額は日々の原油価格・為替で大きく動くので、含み益の大きさそのものに意味を感じてはいません。

自分がこの株を持ち続けている理由は単純で、「日本のエネルギー安全保障そのものに賭ける」という高配当株投資とは少し違う軸の銘柄として、ポートフォリオの一角に置いておきたいからです。ホルムズ海峡が緊迫すればニュースを見て身構えますが、同時に資源価格の上昇局面ではこの株がポートフォリオのヘッジにもなる。KDDIのような「静かに増配し続けるディフェンシブ株」とは真逆の、地政学イベントに反応する銘柄として、性質を理解した上で持っています。

監視しておきたいのは、①原油・LNG価格そのものの動向、②大型投資が続く局面での配当とFCFのバランス、③中東情勢の悪化がイクシスLNGや中東権益に実際に及ぶかどうか。この3つに明確な悪材料が出ない限りは持ち続けるつもりです。

追記:いまのINPEXを、どう持つか(2026.09.02時点の相場観)

中東情勢の緊張とアメリカの動きで地政学リスクが高まり、原油価格が不安定に動いています。実際、中東の緊張を受けて原油が上がり、INPEXにも買いが入りました。

会社としては通期純利益を5,100億円へ上方修正、配当も112円へ増配、さらに1,400億円を上限とする自社株買い。株主還元に前のめりな姿勢は素直に評価したいところです。しかも今回の上振れは原油高だけでなく、イクシスLNGの生産好調も効いている。原油とLNGの両輪を持つ事業構成の強さが出たという意味で、中長期にはプラス材料だと見ています。

ただ、いまの原油価格には中東情勢のリスクプレミアムが乗っているはずです。地政学リスクが後退すれば、原油もINPEXの株価も反落しうる。だからこの上昇を「そのまま長期の成長」と受け取らず、原油が落ち着いた後もイクシスを含めた収益力と配当を保てるかを確認していきたい。

持ち方としては、300株は当面「維持」が基本です。さらに上がれば一部利確も選択肢に入れ、逆に原油下落などで調整して企業価値に対して割安と判断できたら買い増しを検討します。「原油が上がっているから買う」のではなく、原油・LNG価格、イクシスの収益力、増配や自社株買いを含めた株主還元——この3つを見ながら、焦らず判断していくつもりです。

補足データ

項目 数値
設立/上場 2006年4月/2006年4月
決算期 12月
時価総額 約46,449億円(業種内順位1/39社)
自己資本比率 61.0%(連26.3期)
ROE 8.2%(25/12予9.2%)
BPS 4,073円
従業員数 連結3,720名(平均年収1,323万円)
比較会社 石油資源開発(1662)・ENEOS(5020)
特殊な株主構造 経済産業大臣が21.9%保有(黄金株)

データ出典:東洋経済会社四季報(作成日2026.06.17)・SBI証券企業スコア(2026.08.19時点)・INPEX「2026年12月期第2四半期決算・通期業績予想の修正」(2026.08.07会社開示)。EPS・配当推移はIRBank(irbank.net)の独立データとも突合済み

📝 追記(2026.09.02):8月7日の中間決算と通期上方修正

本文の指標は四季報(6/17作成)ベースですが、その後2026年8月7日にINPEXが上期実績と通期予想の修正を開示しました。要点は次の通りです。

  • 上期(1〜6月)中間利益 2,631億円(前年同期比+17.7%)。売上は中東情勢による販売量減で計画を下回った一方、原油価格の上昇とイクシスの好調な生産で利益は計画を上回りました。
  • 通期純利益予想を3,500〜4,500億円→5,100億円へ上方修正(前期実績3,938億円→+29.5%)。原油ブレント前提を通期81.4ドル、為替を159.2円に引き上げ。
  • 年間配当を当初予想108円→112円へ増額(前期100円)。5期連続増配を継続。
  • 1,400億円の自社株買いを決定

短期の数字は明らかに追い風です。ただし「稼ぎが原油・ガス価格と地政学に直結する」「大型投資が続く局面ではFCFと配当のバランスが薄い」という本文の構造的な論点は変わりません。上振れの主因が自分でコントロールできない外部変数(資源価格・為替)である点も含めて、性質を理解して持ち続けます。

【免責事項】 本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入・売却を推奨するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。